これまでのアートレポート

アートレポート- Art Report -

勅使河原純の『とっても気になるあの展覧会へ「行ってきました」』

Hierher-Dorthin-こちらえ、あちらへ-展

ドイツ文化会館で団・DANSグループのユニークな展覧会が開かれた。一見したところ各作家が抱えるテーマに、通底するものはないようだ。しいていえば、一枚のペラペラな平面上に展開されてきた絵画の限界といったものに、奇想天外な手法をもってそれぞれがチャレンジしてみせる姿だろうか。その大きな犠牲の上に、絵はときとして深いテクスチャーと内面性を獲得してきたとしてもである。
例えば佐藤雅晴の作品をみていると、絵画の深みを帯びた画像がそのまま動き出し、一向に変化しないアニメーションとして静かに展開していく不思議さがある。これははたして動く「近代絵画」なのか。それとも絵を凌駕する内面性を帯びてしまった「アニメーション」なのか。(写真:さてどちらが天使で、どちらが悪魔なのでしょう。)
もとより作品のジャンル分けが問題なのではない。近代絵画とアニメーションのどちらにもない「生の気配」が、そこでは当たり前のように辺りを支配していることが問題なのだ。

勅使河原 純

東北大学美学西洋美術史学科卒業。世田谷美術館に入り、学芸業務のかたわら美術評論活動をスタート。学芸部長、副館長を経て2009年4月、JR三鷹駅前に美術評論事務所 JT-ART-OFFICE を設立、独立する。執筆・講演を通じ「美術の面白さをひろく伝え、アートライフの充実をめざす」活動を展開中。熟年世代の生活をアートで活気づけるプログラムにも力を入れている。さらにジャーナリズム、ミュージアム、ギャラリー、行政と連携し「プロ作家になりたい人」、「美術評論家として自立したい人」のためのネットワーク・システムづくりを研究・実践している。

公式サイト
http://www.jt-art-office.com/