これまでのアートレポート

アートレポート- Art Report -

勅使河原純の『とっても気になるあの展覧会へ「行ってきました」』

2012/3/15 update

生誕100年 ジャクソン・ポロック展

東京国立近代美術館 2012年2月10日(金)〜5月6日(日)

クレメント・グリーンバーグの推奨を受けるまでもなく、会場を一巡すれば「インデアンレッドの地の壁画」(1950年、テヘラン現代美術館)がジャクソン・ポロックの代表作だと分かる。地色が赤っ茶けていて、その上に垂らす絵具は白い。だからインパクトがひときわ強烈なのだ。
これは歴史上、もっとも絵画から遠い手法「ポーリング」ないし「ドロッピング」、つまり絵具のブチ撒けでつくられた絵だ。つくった男がまた、アーティストからもっとも遠い風貌をしている。銜えタバコといっても、いまにも唇から落ちそうな危うい銜え方だか、タバコの紫煙に目をしばたたかせながら、トラックの深夜便でも運転しそうな面構えでカンヴァスの脇に立っている。前ではない。何しろイーゼルはもう無いのだから。
そんなポロックが絵のすべてのルール、いま風にいえば〈アートの流儀〉を根底から覆してしまった。新たに出現したのはハイアートか、ポップか、キッチュか、サブカルか‥。62年後の日本で、ことは再び烈しく沸騰しはじめる。
(東京国立近代美術館、〜H24年5月6日)

勅使河原 純

東北大学美学西洋美術史学科卒業。世田谷美術館に入り、学芸業務のかたわら美術評論活動をスタート。学芸部長、副館長を経て2009年4月、JR三鷹駅前に美術評論事務所 JT-ART-OFFICE を設立、独立する。執筆・講演を通じ「美術の面白さをひろく伝え、アートライフの充実をめざす」活動を展開中。熟年世代の生活をアートで活気づけるプログラムにも力を入れている。さらにジャーナリズム、ミュージアム、ギャラリー、行政と連携し「プロ作家になりたい人」、「美術評論家として自立したい人」のためのネットワーク・システムづくりを研究・実践している。

公式サイト
http://www.jt-art-office.com/