アートレポート- Art Report -
『もう一度みたい展覧会』
2018/01/30 update
「大英博物館 古代エジプト展」
森アーツセンターギャラリー/六本木ヒルズ 2012年7月7日(土)~9月17日(月)
古代エジプト文明は、その美術が端的に示しているように、きわめて明快精緻な印象を与える。
複雑ではあっても厳格に様式化されているからだ。ハヤブサ頭やジャッカル顔を持つキャラクターが
あらわれてきても、その本性はつまるところ人間そのもの。つまりギリシャの人間主義の源が、
ここに認められるかもしれない。
それは紀元前10世紀、テーベを中心に上エジプトを支配したアメン大司教パネジェム2世の娘
ネシタネベトイシェルウために、史上最長の「死者の書」/(通称)グリーンフィールド・パピルスが
つくられていることでも、よく理解される。
彼女が死後冥界の旅を経て、無事に来世で復活するため、実に全長37メートルにもおよぶトラベル・ガイド
〈ペレト・エム・ヘルウ〉が用意されたのだ。
本展ではこの「死者の書」に焦点を合わせ、その徹底的な解明が試みられる。明らかにされたのは天地創造、
生前の行為による死者の判定、ワニやヘビの邪魔立て、200の呪文に留まらない。
作品名:フウネフェルの「死者の書」口開けの儀式の場面(部分)
(c)The Trustees of the British Museum
勅使河原 純
東北大学美学西洋美術史学科卒業。世田谷美術館に入り、学芸業務のかたわら美術評論活動をスタート。学芸部長、副館長を経て2009年4月、JR三鷹駅前に美術評論事務所 JT-ART-OFFICE を設立、独立する。執筆・講演を通じ「美術の面白さをひろく伝え、アートライフの充実をめざす」活動を展開中。熟年世代の生活をアートで活気づけるプログラムにも力を入れている。さらにジャーナリズム、ミュージアム、ギャラリー、行政と連携し「プロ作家になりたい人」、「美術評論家として自立したい人」のためのネットワーク・システムづくりを研究・実践している。