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アートレポート- Art Report -

勅使河原純の『とっても気になるあの展覧会へ「行ってきました」』

2012/11/23 update

特別展「出雲」

東京国立博物館 本館 2012年10月10日(水)~11月25日(日)

― 八百万の神、上野に降臨 ―

昭和59年7月島根県斐川町の神庭荒神谷遺跡から、一度に銅剣358本が
出土した。弥生時代の全国銅剣の総数約300本をはるかに超える数量で
ある。さらに平成8年10月、島根県加茂町の加茂岩倉遺跡から銅鐸39個が
みつかった。それ以前に銅鐸がもっとも多く出土した遺跡は滋賀県長洲市
小篠原の24個であったから、わが国の古代世界で「出雲」がいかに突出した
存在であったかが知れよう。
そして平成12年、とうとう伝説の宇豆柱(うずばしら)が発見される。
出雲大社大型本殿遺構の柱材が、土中深くから掘り出されたのだ。
(大社造を支える正方形9箇所の柱のうち、正面中央の棟持柱はとくに
宇豆柱と呼ばれる)。杉で出来ていて、大木3本を合わせて一つの柱をなす。
全体の直径はゆうに3メートルを超えていた。年代測定の結果、鎌倉時代の
宝治2年(1248年)に遷宮された本殿の柱である可能性が高いという。
これらにのって空中高くに聳えていた雲太(うんた・出雲大社本殿)は、
高さ16丈(48メートル)にもおよぶ巨大建築物だったのだ。その並外れた
規模によって、「出雲」は神話を現代へと手繰り寄せてくれる。
いま日本人が、もっとも熱い関心を寄せる対象の一つなのだ。 。

画像:重要文化財「宇豆柱」




勅使河原 純

東北大学美学西洋美術史学科卒業。世田谷美術館に入り、学芸業務のかたわら美術評論活動をスタート。学芸部長、副館長を経て2009年4月、JR三鷹駅前に美術評論事務所 JT-ART-OFFICE を設立、独立する。執筆・講演を通じ「美術の面白さをひろく伝え、アートライフの充実をめざす」活動を展開中。熟年世代の生活をアートで活気づけるプログラムにも力を入れている。さらにジャーナリズム、ミュージアム、ギャラリー、行政と連携し「プロ作家になりたい人」、「美術評論家として自立したい人」のためのネットワーク・システムづくりを研究・実践している。

公式サイト
http://www.jt-art-office.com/