これまでのアートレポート

アートレポート- Art Report -

勅使河原純の『とっても気になるあの展覧会へ「行ってきました」』

2012/11/27 update

「手の痕跡」

国立西洋美術館 2012年11月3日(土・祝)~2013年1月27日(日)

オーギュスト・ロダン「バルザック」

― ロダンとブールデルの彫刻と素描 ―

「たかがコレクション展」と一蹴するなかれ。久方ぶりに、国立西洋美術館が
誇るオーギュスト・ロダンの彫刻と、 その弟子ブールデルの作品を満喫
できる展覧会である。
古代からつづく人間の手業が、ブロンズという金属に移し替えられた途端、
神々しいまでの輝きを帯びる過程が丁寧に、 そして何より神秘的にたどら
れる。とくにロダンのモデルを前にした肖像群がすばらしい。
傲慢、貴族的気取り、天才性、それ故の苦悩、弱気、愛国の怒り、そして
慈愛に満ちた聖母と、ロダンならではの 人間性剥き出しのドラマがそこ
ここに展開している。
他を寄せつけぬ気品に満ちた「バルザック(最終習作)」像 (1897年、写真)
など、一世紀のときを隔てて、この巨人のまえに無理やり引き出された気分
にさせられるから恐ろしい。
画像:「バルザック(最終習作)」像 (1897年)




勅使河原 純

東北大学美学西洋美術史学科卒業。世田谷美術館に入り、学芸業務のかたわら美術評論活動をスタート。学芸部長、副館長を経て2009年4月、JR三鷹駅前に美術評論事務所 JT-ART-OFFICE を設立、独立する。執筆・講演を通じ「美術の面白さをひろく伝え、アートライフの充実をめざす」活動を展開中。熟年世代の生活をアートで活気づけるプログラムにも力を入れている。さらにジャーナリズム、ミュージアム、ギャラリー、行政と連携し「プロ作家になりたい人」、「美術評論家として自立したい人」のためのネットワーク・システムづくりを研究・実践している。

公式サイト
http://www.jt-art-office.com/