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アートレポート- Art Report -

勅使河原純の『とっても気になるあの展覧会へ「行ってきました」』

2013/12/18 update

【特別展】ターナー展

神戸市立博物館 2014年1月11日(土)~2014年4月6日(日)

「ターナー展」

水のある風景をこよなく愛したウィリアム・ターナー。
そんな彼が、イングランドでもっとも美しいと誉れ高い
湖水地方の景観を、ただ黙って放っておくわけがない。
カンブリア山地から流れ出た氷河によって刻まれた
放射状の谷には、決まって澄んだ水をたたえる湖が
あった。サルメア湖、ダーウェント湖の西に位置する
バターミア湖の東端フリートウィズ・パイクから
ながめると、高原の険しい山々に挟まれるようにして、
遠くクラモック湖のあたりまで見渡せる。 折しも
水蒸気をたっぷりと含んだ黒雲に遮られて太陽は顔を
隠す。と次の瞬間、奇跡はおこる。まるで夜のような
暗闇となった天空に、突如巨大な虹が現れたではないか。
真白に光り輝く半円は、湖に映りこんで正円へと完結
していく。こうして伝説の「夜の虹」は、歴史上ただ
一度だけ描きとられたのだ。しかも、他のいかなる方法
によっても及ばないほど正確無比に。
この作品は23歳の青年画家が、水のある風景へといかなる
気迫で挑んでいったかを示す記念碑といっても過言では
ないだろう。(東京都美術館、~H25年12月18日)

               
画像:「バターミア湖、クロマックウォーターの一部、
    カンバーランド、にわか雨」
    1798年、 カンヴァス・油彩、88.9×119.4cm




勅使河原 純

東北大学美学西洋美術史学科卒業。世田谷美術館に入り、学芸業務のかたわら美術評論活動をスタート。学芸部長、副館長を経て2009年4月、JR三鷹駅前に美術評論事務所 JT-ART-OFFICE を設立、独立する。執筆・講演を通じ「美術の面白さをひろく伝え、アートライフの充実をめざす」活動を展開中。熟年世代の生活をアートで活気づけるプログラムにも力を入れている。さらにジャーナリズム、ミュージアム、ギャラリー、行政と連携し「プロ作家になりたい人」、「美術評論家として自立したい人」のためのネットワーク・システムづくりを研究・実践している。

公式サイト
http://www.jt-art-office.com/