これまでのアートレポート

アートレポート- Art Report -

勅使河原純の『とっても気になるあの展覧会へ「行ってきました」』

2015/12/26 update

「村上隆の五百羅漢図展」

森美術館 2015年 10月31日(土)~ 2016年 3月6日(日)

「村上隆の五百羅漢図展」

 

この秋最大の呼び物、「村上隆の五百羅漢図展」が森美術館で賑々
しくスタートした。思えば2012年カタール国の首都ドーハで、絵画
史上最大級という呼び声も高い全長100メートルにもおよぶ
「五百羅漢図」(写真)が発表されたとき、世界の美術関係者は驚き
の目を見張り、感嘆の声に湧き返ったものだった。
前年の東日本大震災と福島の原発事故で、もはや日本は再起できない
のではないかとさえ危惧されていたからだ。そのときいち早く救援の
手を差し伸べてくれたカタール国へ、何かお礼は出来ないだろうか。
画家のそうした一途な思いは「鳥獣人物戯画」、「北斎漫画」以来の
伝統を誇る線描画法の、ひと癖もふた癖もある羅漢様の大集合へと
集約されたのだった。
発表当日は各種の情報が飛び交い、その余波はとうとう東京・三鷹の
わが事務所にまでおよび、PCをパンクさせ使用不能にまでしてしま
った。そうしたわけで今回の国内展は、まさに全美術ファンこぞって
の待望のイベントとなった。
黄金の達磨タワーあり、超巨大絵画あり、はたまた辻惟雄先生の応援
スピーチありの桃源郷のような会場は、初日前夜(内覧会)のお披露
目でさえ二千人を超える人の波で埋めつくされた。
それをそのまま日本美術の、否日本文化復活の狼煙と受け取った
のは、決して私だけではなかったのではあるまいか。
衰退が叫ばれて久しい日本だが、まだまだわれらの行く手は
明るいぞ。(~H28年3月6日)

(『村上隆の五百羅漢図展』、森美術館、~H28年3月6日)
【画像】《宇宙の産声》2005年- 451.3x268.0x302.8cm 金箔、FRP、鉄



勅使河原 純

東北大学美学西洋美術史学科卒業。世田谷美術館に入り、学芸業務のかたわら美術評論活動をスタート。学芸部長、副館長を経て2009年4月、JR三鷹駅前に美術評論事務所 JT-ART-OFFICE を設立、独立する。執筆・講演を通じ「美術の面白さをひろく伝え、アートライフの充実をめざす」活動を展開中。熟年世代の生活をアートで活気づけるプログラムにも力を入れている。さらにジャーナリズム、ミュージアム、ギャラリー、行政と連携し「プロ作家になりたい人」、「美術評論家として自立したい人」のためのネットワーク・システムづくりを研究・実践している。

公式サイト
http://www.jt-art-office.com/