これまでのアートレポート

アートレポート- Art Report -

勅使河原純の『とっても気になるあの展覧会へ「行ってきました」』

2016/4/9 update

「MIYAKE ISSEY展」

国立新美術館 2016年 3月16日(水)~ 6月13日(月)

「MIYAKE ISSEY展」

 

三宅一生の衣服は、ボディをカンヴァスにして描かれたアート
なのか。それが最初からの素朴な疑問であった。
彼はいう。「基礎となる問いがある――三次元である身体を二次元の
布でいかにして包むか。衣服は着ることではじめてかたちをなす」。
3Dプリンターさえある現代では、ちょっと物足りない気もしないでは
ないが、まずは真っ当なご指摘だろう。「そのとき布と身体との空間
も、また活かされる。一枚の布で造形された服にはこのことが如実に
表れている」。
ふーむ、なるほど。衣服とボディはもう少しインタラクティヴな関係
なのかもしれない。三宅はいう。「主役は身体である。身体は衣服に
動きと生命をあたえる。だがしかし、『ボディ』は芸術作品を意図
してはいない」。
こんな経験が思い返される。模様のついた一枚の布がそこに置いて
ある。ただの布切れ以上の感慨はない。ところがその布を人が纏った
瞬間「何と上品な」、「何と優雅な」という感想が頭をよぎった。
衣服がボディを被って、ボディごと自立したアートを志向するのだ
ろうか。服を纏う人は、衣服をただの布切れ(基底材)にすることも
上品で優雅なあるものにすることも出来るのではあるまいか。
まさにそこに、三宅一生の眼差しが「デザインとなって融合」する
のである。(国立新美術館、~H28年6月13日) 



勅使河原 純

東北大学美学西洋美術史学科卒業。世田谷美術館に入り、学芸業務のかたわら美術評論活動をスタート。学芸部長、副館長を経て2009年4月、JR三鷹駅前に美術評論事務所 JT-ART-OFFICE を設立、独立する。執筆・講演を通じ「美術の面白さをひろく伝え、アートライフの充実をめざす」活動を展開中。熟年世代の生活をアートで活気づけるプログラムにも力を入れている。さらにジャーナリズム、ミュージアム、ギャラリー、行政と連携し「プロ作家になりたい人」、「美術評論家として自立したい人」のためのネットワーク・システムづくりを研究・実践している。

公式サイト
http://www.jt-art-office.com/